庄内協同ファームだより

トップページ > 庄内協同ファームだより > 庄内協同ファ-ムだより 発行 No.99 2003年11月

百姓の心意気

志籐 正一 藤島町

11月も半ばに入り、鳥海山も月山も中腹まで雪をいただき、刈り取りを終え静かになったたんぼには白鳥が群をなして落ち穂をついばんでいます。
このところ11月にしては珍しく穏やかな天気が続き、転作田の大豆の収穫もいよいよ追い込みに入っています。せめてこの秋の天気が半分でも7、8月にあったらと恨めしく思いつつ、93年以来10年ぶりの冷害年の今年、庄内協同ファームの米の予約をまとめた結果を見ると、うるち米で80%もち米で85%くらいの収穫量になりそうです。

不幸中の幸いといえるかどうか、今年の春先、庄内協同ファームではもち米が底をつき加工場が開店休業の状態になったことを踏まえ、栽培面積を多くしました。このおかげで何とか減収分を確保し去年並のもちの供給にはこぎ着けられそうです。
不稔型の冷害で、10アールあたり3~4俵しか穫れず、他の産地からもち米を買わざるを得なかった1993年の冷害を思い起こせば、何とか自前のもち米でおもちを作れることに安堵しています。

今年の米不足をマスコミはそれほど深刻には報道しない様ですが、実際の減収はかなりのもので、東北北海道の中では減収率が低いと言われるここ庄内でも農協は仮渡し金を昨年比125%まで上げ集荷に懸命です。
特に不足になっているのがもち米で仮渡し金は昨年比140%、農家の庭先には、3万円でも4万円でもいいから、もち米を売ってほしいという業者が出入りしていてなかなか集荷できないようです。豊作だと言っては減反を増やし、不作を迎えれば極端に米価が上がってまたまた消費が減る。

こんな繰り返しに私たちは少し距離を置きたいと思います。産直の意味をもう一度問い直し、業界の値動きに惑わされることなく、何とか値上げをせずこれまで通りの価格と品質でお米やもちを供給したいと思っています。
15~20%の減収は所得に換算すると50%減位になってしまいます。豊作でも不作でも生産費は同じなので不作分はそのまま所得に食い込むからです。またこれまで低温や冷害の時ほど、有機のたんぼは強みを発揮すると言われてきましたが実際はなかなかその通りにはいかないようで、カモなど害虫対策をしたところは有機栽培でも比較的収量が安定していますが、大部分のたんぼは田植え後高温に経過した今年、生育前半にイネミズゾウムシなどの害虫被害やおもわぬ地震の被害などを被ったことが最後まで響いたようです。こんな冷害の年でも年々種子の数を増している雑草は遠慮無しに生えてきます。

そんなこんなで、有機の田んぼも減農薬も総じて収穫が進むにつれて収量が低いことがはっきりしてきています。
にもかかわらず、価格の据置は私たちの大きな決意であり、感謝の気持ちであり、百姓としての心意気です。これからも相互の信頼の基におつき合いを重ねていきたいという私たちの願いでもあります。

農民が農民らしく生きられることを目標に庄内協同ファームは組合員の経営と生き方を支える組織として法人化し、15年を経過しました。産直を通じて知り合えた皆さんに支えられ同じ生活者として学習する中で、環境汚染、環境ホルモンや遺伝子組み替えの問題など多くの問題に関心を持ち、農業のやり方そのものを変える必要があることを知りました。
私たちにとっては大きな決断でしたが農薬や化学肥料に出来るだけ頼らない農業を目標に組合員がそれぞれ工夫をして挑戦してきました。

雑草が生え、害虫の被害でみすぼらしくなった田んぼを前にして、このまま続けていいのだろうかと迷うこともたびたびですが、やはり私たちの目指すところは“命をつなぐ本物の食べ物を作る”であるように思います。
迷ったときはこのことに立ち返りつつ、農業をやり続けることが日本の農業を守ること、地域や環境をを守ること、そう信じてこれからも頑張っていきたいと思います。
 加工場はいよいよ生産に加速がかかり、猫の手も借りたいほどの忙しい季節を迎えます。広かった駐車場が組合員や餅つきのためにお願いした臨時の作業員の人たちの車で埋め尽くされ、白衣に身を包んだ50人近くの人達がにぎやかに作業をすることになります。
出来上がった庄内協同ファームのおもちが皆様のおいしい笑顔を誘えますように。

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