農業に携わって…
今度新しく組合員になった、今野裕之です。稲作を中心に、大豆、野菜を少し作っています。稲は、約3.5ha作っていて、そのうち2.3haが有機栽培(転換期間中)で、残りが除草剤1回のみの減農薬減化学肥料栽培です。
有機は、種子消毒から全て農薬や化学肥料などを使わないので特に育苗段階での失敗が多く、今年も少し失敗しました。
農業は「自然と共生」しているんです。人間がどうあがいても自然にはかないません。人の考えで、虫が多い時には「あれ」、生育が悪い時には「それ」、生育過剰の時には「これ」といった具合に色々な農薬や化学肥料などを使うのですが、使用直後はそれなりに効いた様に見えても、結局は同じになる様に私の目には見えます。もう少し自然にまかせ、農薬や化学肥料に頼らない農業をみんながしていければなあと思うのです。
そういう私も農業をやり始めてすぐから有機栽培はしていません。最初は、慣行栽培で農薬も化学肥料も使っていました。私の友達がふとした事から合鴨農法を始めました。田んぼに鴨を放し、虫を食べてもらい、足で土をかき回し草が生えてこないようにする。かわいく、いくら見ていてもあきませんでした。
「こんなおもしろい農法があったのか、よーし自分もやってみよう」と思いました。実際にやってみると、鴨たちはかわいく、田んぼのいろんな所をつつき虫たちを食べに元気よく泳ぎ回るのでした。しかし、鴨たちは平均的に田んぼの隅をきれいに泳いではくれません。ですから所々草が生えてきます。その時は鴨たちと一緒に田んぼに入って草取りをします。合鴨農法をやり6年目になるのですが、やっと土が出来てきたのかなあと思います。前より有機肥料の量も少なくて済みますし、稲も丈夫に育つ感じがします。
人は、食べなければ生きていけません。そして、健康に過ごせるように色々な物を食べます。そうして長生きできるのだと思います。「こんなうまいものをもっと食べたい」と皆様から思えるものを、まだまだ未熟な私ですが作っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
スケッチ
9月にしては朝晩肌寒いこの頃、鳥海山は例年より3週間早い初冠雪となり、秋が駆け足で通り過ぎて行くように感じる。
9月11日に始まった稲刈りも、もう少しを残すだけとなった。ザクッザクッ、コンバインが作業し易いように田圃の隅を鎌で手刈りをしている音だ。今年は穂が重い、籾もムチッとしていて稔り具合もいいぞ。
コンバインは30aを50分で刈り終え大きな袋に入った籾がライスセンタ-に運ばれていく。乾燥、調整作業の3日後お米が出来あがった。1年間の米作りが数量と品質に表れる緊張の時。出来たての新米を持って来て食してみる事にする。
水加減は新米も古米も同じ量でいい。昔は稲を自然乾燥にしていたので玄米に含まれる水分が多く、新米を炊く水の量は減らすと言われていたが、現在は機械乾燥で水分は一定に仕上ている。又、米の保管も湿度を一定にして保管しているので新米も古米も同じなのだ。炊飯器がシュ-シュ-音をたて、2人と160羽の合鴨達で頑張った無農薬栽培のひとめぼれが、ごはんとなるクライマックスを迎えようとしている。家中に広がる幸せな匂い。
鴨達は、稲には害虫となるドロオイ虫、イネミズゾウ虫等を食べてくれて、一生懸命に動き回り土をかき混ぜるので草も生えにくかった。8月に入ると日中は暑く、朝晩は涼しい日が多かったのでイモチ病の発生もなく、台風もそれて自然が大きく味方をしてくれた。
8月末、稲穂が頭を垂れ始めるとヒエが稲よりずっと背丈を伸ばし、黒い種をつけ、あっちこちに目立ってくる。鴨達が除草しきれなかった株ヒエだ。
無農薬で稲を栽培するという事は周囲の人に格段の配慮をしなければならない。害虫の発生源になってはいけないし薬剤を使わない分、気を使い時間を使い、圃場を見守り、それなりの手段をこうじなければならない。ヒエのように一目瞭然の雑草だらけにしておくというのは、いかにその圃場の管理が行き届いていないかを示しているようなものだといつも夫と口論になる。
除草剤を使っていないからといってこの黄金色の美しい風景の邪魔はしたくない。ともかく最後の闘いだ。全ての田圃のヒエ取りを終え、稲刈りに臨んだ。
ピ-ピ-、ごはんが炊きあがった合図だ。最後の仕上げ、蒸らしを終え蓋をとる。
プ-ンと甘い新米の香り、ツヤがあり、ごはん粒が立っている。
シャリ切りをする要領で混ぜて仏前に供えるごはんを盛り、我慢出来ずちょっと味見、
「…‥おいしい」。1年の思いと共にのみこんだ。
夕食時、夫は雄弁だった。わかるわかる、安堵と喜びの束の間のひととき。
大禍もなく終えられた今年のお米作り。自然に感謝です