庄内協同ファームだより

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1999年12月師走

佐藤清夫  鶴岡市 99.12.23日

 とにかく忙しいだけで来た一年だ。 子供の乗る三輪車のようなもの。懸命に足を動かすわりにたいして進まない。仕事が多すぎて、効率があがらない悪い例の見本みたいなものだ。時にはラーメン屋に走ることもあるが、忙中閑在りだ。枝豆・防虫対策の唐辛子液が 今年のだだちゃ豆は、夏の好天に恵まれて、近年にない収穫を上げることができたのですが、フタスジヒメハムシやハダニの発生を少なくするために、唐辛子の抽出液を撒布した時に、じつは大変なことがあったのです。2反くらいのだだちゃ豆畑に、唐辛子液を撒布して私がトラクターで次の畑に向かおうとしたところに、すぐとなりの60歳くらいのおじいさんが、激しくせきこんでトラクターに乗っている私を止めようとするのです。目は涙でぐしゃぐしゃ、口は激しく咳き込んだために泡を吹いている。 目の前で倒れながら私になにやら訴えている。なにか大変なことがおきたのか、とにかくトラクターを降りて、そのおじいさんを抱きかかえて家の中に連れていきました。 そこで初めて事情が理解できたのでした。それは、撒布された唐辛子液が気流に乗って、畑側の窓から家の中 に入ってしまったのです。何も知らないその家のおじいさんは、大きく吸い込んでしまったのです。事態を知った私は呆然自失。

大事には至らなっかたが 10分位して、咳き込みも収まり、目の涙も乾いて落ち着いたときは、本当にほっとしました。そのあとおじいさんは“死ぬかと思った”と笑いながらいってくれましたが、次の日にお詫びに行って許してもらいました。自然のものを利用したものでも、大変なことになるという失敗談として、みんなも気をつけてください。

減農薬栽培や基準・認証が課題

 だだちゃ豆が終われば稲刈り。夏が暑かったために白い米が出たり、かめむしの被害がでたりで、あまりよくなかったと言われています。でも、暑くない夏はもっと困るでしょうに。除草剤しか使用しない、徐一栽培もなかなか思うようにいきません。無農薬栽培は挫折してしまいました。もう一度、仕切りなおして来年に生かすようにしなくてはなりませんが、徐一栽培の技術をもっと高めることが課題である気がします。今、ファームでは餅製造の最盛期。原料のもち米の栽培はすべて徐一栽培ですが、今後、庄内協同ファームとして、基準・認証に向けての方向性が問われる場面に立つことになるでしょう。揺れながらも対応していくでしょうし、していかなくてはならないと思います。今年もあとわずか、2000年は皆様にとっても、庄内協同ファームにとっても飛躍の年であればと願います。

スケッチ 今年の、農作業をふりかえって

志藤知子 藤島町 99.12.22日

 白い雪に覆われた大地を見ていると夏の日、その下でヒエや雑草と戦った日々が何だか遠い昔のような気がしてくる。あまりにも静かで、あまりにもひっそりとしていて夏のあの辛さも大変な思いも、吸いこまれて、平らになって消えていきそう。

雑草との闘い

 それにしても、今年の雑草はすごかった。無農薬田2.5haには、すみからすみまで、ヒエ、コナギなどが、見事に生え揃って、私たちを悩ませた。二人で向かうには、あまりに広すぎる面積。繁雑な作業をしながら、時間をとっては田んぼに入り、ヒエを抜く。夫は除草機。50才をすぎた体に、満ちあふれる程の体力の備えはなく、”頑張りすぎないで、”と声をかける私に”頑張らないでやれる訳がない、”と無理を承知の農作業。傍で見ている私までが、よくやるなあ、と感心する程、少しづつ、粘り強く、一押し一押し一定のリズムを刻みながら、一条ずつすすんでゆく。あの力は、何だったのだろう。どこから湧いてきたのだろう。食べる人の為にそこまで頑張ることはない、と言う人もいたけれど、そういう意味での頑張りではなかったように思う。

確かな技術を希求する思い

 人の為に頑張るのには限界がある。
生まれ落ちるとすぐに農家の長男として家業を継ぐことを義務づけられ与えられた枠の中ではあれ、農業を愛し、誇りとして生きてきた夫。天職と思い頑張り続けてきた農業分野において、安全でおいしい米づくりへの技術確立は、ここ数年来の目標であった。自ら学び、研究した農法を実践し、ある程度の手応えを得たいという気持ちは、痛い程に理解できた。
安心、安全を旗印に、産直をすすめ、それで生き残っていこうとする私達の組織にとってもそれは、避けては通れない命題でもあった。あの頑張りのエネルギ-源は、ここにある。確かな技術を希求する思いが、頑張りを生んだのだった。私達はひと足、ひと足、無農薬でもどうにか米作りはできるという確信を得る為に頑張っていたのかもしれない。結果は、大量にヒエの種を田んぼの中に残すことになってしまったけれど、やれるだけの努力はした。今は雪の下で休眠している雑草の種が来春どんな動きを見せるか、まさに心配のタネではあるけれど、今年の頑張りには、心からのねぎらいを贈りたい。”お父さん頑張ったね、ご苦労様。”そして私にも”ご苦労さん!!”

栽培技術の飛躍的発展を

1999年も、もうすぐ終わり、21世紀の扉が開く。安心、安全にこだわった食べ物づくりを目指す私達の精一杯の努力が徒労に終わらぬよう、この方面での技術研究が大きな力を以て飛躍的に進むことを期待したい。そして、農業が私達人間にとっても地球環境にとっても、本当の意味での発展をとげる時代になって欲しいと願うばかりである。

<事務局>

一年間のご支援ありがとうございます。
「庄内協同ファ-ム便り」は、組合員のそれぞれの思いや農村風景を紙面にのせ、今号で60号の発行になりました。この「お便り」が、少しでも私たちの活動を理解して頂けるものとなれば幸いです。
 よいお年を。 -白沢-

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