もうすぐ冬
白鳥も養う田圃の豊かさ
秋作業が終わりほっとしているうちにもう11月。冬の使者である白鳥が、シベリヤから飛来してきている酒田市の最上川河口は、日本一の白鳥の飛来地です。そこを拠点として朝一番に庄内平野に散らばっていき、我が家の近くにも朝7時半頃に群れをなし飛んできます。
10aに10~20羽ほどが収穫の終わった水田に落ちている稲穂や、コンバインから出た籾を拾いついばんでいるのですが、白鳥が多く集まっていると「×××メーカーのコンバインは、性能が悪いからだ」と、酒飲み話に花が咲きます。白鳥も養う田圃の豊かさは私達庄内の百姓の自慢の一つです。田圃は米を生産するだけではなくいろいろな役割を果たしています。
大雨の時にはダムの役割を果たし水害対策の上では欠かせない存在であり、田圃に水を張ることにより稲の連作障害を回避して持続的生産を可能にし、トンボなど昆虫類の発生源でもあります。
農業の多面的機能
2000年からの新しい貿易のルールを決めるWTOという機関で、日本はこの農業の多面的機能を中心課題として主張しているところです。
農産物の輸出国であるアメリカは、自由貿易を振りかざして、農業の多面的機能は貿易障壁となるとして認めようとしていません。食糧自給率の低いわが国に、まだまだ農産物を売り込むつもりなのです。狙いは米だからです。胃袋の中身を少しでも外国から取り戻すためにも、水田は守っていかなければなりません。その意味で新しい貿易のルールの中に農業の多面的機能をもり込み農業の特殊性を訴えていきたいものです。
遺伝子組み換え農産物
低コスト、大量生産だけの必要性から出てきた遺伝子組み換え農産物には深刻な問題があります。除草剤抵抗性を持ち枯れない大豆、虫を殺す毒性を持ったトウモロコシなど、遺伝子操作により地球上になかった農産物や、安全性を無視した農産物が外国で作り始められており、それらが原料の菜種油、コーンスタ-チ、スナック菓子などが身近に溢れてきています。一部遺伝子組み換え食品表示の義務化が法制化され選択の幅がでてきましたが、我々生産者も、より安全な農産物を作るよう努力をしていかなければなりません。
今年の米は
そんな思いを込めて栽培してきた今年の米は、乳白米とカメ虫の食害が少し見られましたが、見かけより食味が自慢のお米を今年も生産することができました。私達生産者が自主基準を設け、化学肥料を極力減らして有機質割合を70%程度までたかめ、お日様の恵みをいっぱい浴びて充分に稔ったお米です。また、対外的にも認められた農産物にするために第三者機関認証の準備に入り、来年に向け更に意欲を新たにしているところです。
夕方五時過ぎになると、私達に挨拶をするように鳴き声をあげぐるっと旋回して帰っていく白鳥たち、こんな風景をずっと守り続けていきたいものです。
スケッチ
秋を彩った、木々も今ではすっかり葉を落とし冬を迎える準備に入っているようです。今年は気温が高く回りの山々も例年とは少し違い、月山や鳥海山の山頂に積雪が見られるだけで暖冬で穏やかな日々が続いております。
餅製造の最盛期
気温が高く過ごしやすいのはいいのですが私達のように餅を製造している者にとっては大きな悩みです。
それは温度が高いと雑菌が繁殖しやすいということです。そのため袋詰めの作業では手早く袋詰めをし、エージレスを入れてシーラーをします。ダンボールの箱に定数詰めをし、すぐ冷蔵庫へ運ぶ敏速な作業が要求されます。パック室に入る前には作業着の点検、手の消毒の徹底など細心の気遣いで作業しております。
これからは餅製造の最盛期、製造室、パック室、そして検品発送と総勢40人位で作業にあたります。製造、発送終了予定の12月末日頃まで事故が無く無事に終えられるように願っております。
今春から就農した息子と餅加工に使用されている餅米は私達が生産した物です。我が家では今年就農したばかりの息子が夫の指導で生産しました。初めて農作業する者にとっては、作物の生理や管理、仕事の手順、農機具の運転操作など取得しなければならないことがたくさんあります。又栽培作物が多品目になっており、春の農繁期には息子曰く「覚えることが多すぎてパニックになりそうだ」とのこと。そして、今年の夏は気温の高い日が長期にわたり続きました。炎天下の下での農作業は慣れた人でも大変きつい仕事です。小言一つ言わず、頑張る姿に息子の成長と頼もしさを感じた親バカな私です。
それから彼にはもう一つ仕事があります。無農薬有機栽培での野菜作りです。農業書を片手に四苦八苦して育てた野菜が実をむすび収穫期をむかえ、我が家の食卓に上がりました。今まで食べたことがないニガウリやズッキーニ、見るのも食べるのも初めての野菜料理は食卓をにぎわし家族団らんの場をさらに楽しくしてくれました。今年は百姓としての第一歩。どんな思いでいることやら一歩一歩大切に頑張って欲しい。そして仲間を多くつくり、また村に活気がよみがえってきたらいいのにと願っております。