庄内協同ファームだより

トップページ > 庄内協同ファームだより > 庄内協同ファ-ムだより 2000年12月 発行 No.70

一年間のご支援ありがとうございます。

代表 佐藤清夫 鶴岡市 12月22日

おさい銭 百円玉一つ ぽんと投げて 手を合わす お願い事の
多いこと 相田みつおの日めくりカレンダーの一ページ。
以前は二言三言、今は目を閉じてややしばらく手を合わせている。誰もが身に覚えのあることだ。新年を迎えて、今年こそは、こうあってほしいと願う気持ちは農家ならさらに強くなりそうだ。

今年の天候は比較的恵まれ、作柄も品質も良いと言われているにしては農家の顔は暗い。米の価格は下がる一方だし、転作も増える一方だ。5年間で米の価格は25%も下がっているし転作率は30%にも達している。村の生産組織は平均年齢が毎年一才ずつ上がっていくし、いつ壊れても不思議はない。
冬の仕事に、きのこの栽培をしていた者も激減した。韓国と中国からの輸入に太刀打ちできなかったからだ。今、中国では日本向けに日本と同じ面積のねぎが植えられている。国を挙げての政策だ。勿論、有機認証を取得するという。新年の願い事が多くなるわけである。
この国は、いったいどこに行こうとしているのだろうか。国も、政治も、経済も混迷するばかりであるが、庄内協同ファームは町と村の産直提携を進めることと、地域と一緒になって発展しようとすることが基本にあるのだと思う。そのためにも、農業を営む中で考えている“気持ち”“こころ”“思い”を発信させていく事が大事だと思う。

庄内協同ファームの発展は私たちの農産物や農産加工品を買っていただいた人たちによって、あるいはそれに係わってきた人たちによって支えられてきたのだ。物流ばかりでなく、こころの支えがあったのだと思っている。今後も支えられながら発展する努力を惜しまないつもりだ。
春からJAS法の有機認証取得のために動き回ってきた結果、秋10月に認証機関(株)アファスの栽培及び加工食品の有機認証を取得できたが、組織の立ち上げ、書類の整備、監査員による監査、判定、と予想もしなかったほどの時間とお金が必要とされたが、悪い事ばかりではない。
一つは情報を公開できること。どんな作り方をしたのかをはっきりと表示する事ができること。二つは認証システムを組織改革につなげることができることだろうか。
経営としての効果はすぐには期待できないかもしれないが、猛烈な価格破壊には少しは抗しうると思っている。まだまだ、認証に関してもJAS法に関しても変わっていくことが予想されるが、今のところ庄内協同ファームは認証取得を方針としている。そして来年の春には新しい工場での餅製造になる予定だ。

最後に庄内協同ファームの建っている山形の歌人斎藤茂吉の晩年の歌を掲げたい

最上川逆白波のたつまでにふぶくゆうべとなりにけるかも

斎藤茂吉

スケッチ

志藤知子 藤島町

12月にしては穏やかな日和に誘われて、柿畑へ車を走らせるとすっかり葉を落としもぎ残しの柿の実を所々にぶら下げて淋しげに柿の木が並んでいる。雪の降る前のひと時を惜しんで忙しく剪定作業に励む人々の姿もどこか寒々しく、たわわに実をつけ葉を茂らせていたころとはうってかわって静かな光景である。

今年はこの柿畑にちょっとした異変があった。地元の中学校から、二年生160名に、柿畑で農業体験をさせてほしいとの申し入れ。1軒の農家への割当が6~7名。若い世帯が働きに出て、年寄夫婦が現役で柿畑を守っている農家が多いこの集落の中で、160名もの中学生を受け入れられるだろうかという不安がこみあげてきた。
作業には道具もいるし、人を運ぶ車もいる。お手洗いだって皆、天然自然の中だからそれはどうしようとか、受け入れの相談会では喧喧ガクガク。それでも皆頑張って受け入れることを決め、当日の不安は学校と役場、農協、村とが協力し、何とか一つずつ片付けていった。

迎えた当日は秋晴れのいい天気。ぞろぞろと160名が自転車に乗って坂道を登ってくる様子は壮観であった。
我が家には、男子3名、女子4名。数の上でも元気の面でも女子が勝っている班に見えた。早生柿のもぎ取り作業をしてもらったが、細かい注意を良く守って、ていねいに仕事をしてくれた。
おもしろくないのかな、と心配するほど無口でおとなしい子もいたが元気よく様々の声を発しながら仕事する活発な子に支えられて楽しく作業が進んだ。
一日一緒に働いていると、各々の個性が良く見える。何よりも、7人の会話を聞いているのがとても楽しく、若さっていいなと心から思える。
学校で起こる様々の問題行動をよく耳にするが秋晴れの空の下で、小さな虫や、くもの巣一つにキャーキャー言いながらあけっぴろげにはしゃぐ彼女らを見ていると、他人事のように思えてくる。
一生懸命働いてもらったおかげで持ってきたコンテナは、柿で一杯になり集合場所へ戻る軽トラックの上の子供たちが元気で誇らしげだった事。労働の成果が目に見えた事で自信を持ったのかもしれない。
作業の数日後、一人一人の感想が届けられた。やる前はいやだと思ったけれど、やってみたらおもしろかったとか、やったことのない仕事で楽しかったとか総じて、こちらが楽しくなる文面で安心した。

それから一月程して、収穫が全て終わったところでこちらから手紙を書いた。一生懸命やってくれて嬉しかったこと、みんなの元気が村に活力を与えてくれた事など、14歳の子供たちに感謝を込めて書いた。人に感謝される事の嬉しさや、一生懸命やれば人は応えてくれるということを、あの7人の子供たちに知って欲しかった。手伝ってくれた子供達へ、私たちからのささやかなお返し。二日目はあいにくの雨だった一日農作業で終わってしまったけれど、山の空気のおいしかった事、協力して働く事の楽しかった事を忘れないで欲しい。
“さとみー!!”と元気に友達を呼ぶ声が耳の奥で思い出と共に響いている。

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