庄内協同ファームだより

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秋祭りの晩に

2000年8月28日 志藤 知子 藤島町

旧盆を迎える頃、五穀豊穣を祈って、村々では秋祭りが行われる。私の住む村では、8月16日、隣村では15日、生家では、18日に開かれるのが習わしだった。

 当日は、親戚中を呼ぶので、家々の者はもてなしに追われ、祭りどころではなく慌しく過ぎ去ってしまう。そこで近頃では、祭りの前に村人達で楽しむ会を開くところも多くなった。それが、今年は12日。公民館の広場にテントを建て、出店し、トラックの荷台を舞台に仕立てて、カラオケや踊りを楽しむ。暑かった一日を生ビールでいやし、久しぶりに戻った若者たちで活気づき祭りも佳境に入った頃、それまでサワサワと吹いていた東よりの風が、強くなり始めた。いやな風だな、と思い始めたのもこの時刻。8時頃だったのかもしれない。
 祭りも無事終わり、床についた頃いよいよ風音は強くなって窓を揺らした。出穂したばかりの稲に傷がつくことを心配しながらも眠りに落ちていった。  翌朝、田んぼ廻りに行った夫が、異変を伝えた。「風で稲がやられている」話を聞いただけでは程度が想像できないので自分で確かめる為に圃場へと走った。  今年は天候が穏やかで順調な生育を見せていた稲に期待を寄せていただけに又、何かが起こってしまった不安を感じながら、田んぼに目を向けた。

稲穂が銀色に輝いていた。見たことのない光景だった。風を受けた渕を中心に、被害を受けた所が、銀色に染まりまだ止まぬ風に揺れていた。全面やられている所もある“白穂”というのだそうだ。昨日の落日まできれいだった稲が、たった一晩の東風でこんな被害を受けてしまうことがあるのだということを初めて知った。出穂したてのコシヒカリ系の稲が一番手ひどくやられていた。逆らえない自然からの受け入れ難いプレゼントは今年はこんな形でやってきた。皮肉にも豊穣の秋を願いながら飲んで騒いだ祭りの晩の出来事だった。銀色に光っていた稲穂は翌日には白に変わり今は赤茶けてすっかり枯れ、稔り始めた田んぼの中で首を伸ばして立っている。イモチ病にやられた時と同じ色だ。長く農業を続けてきた夫にとっても、この“白穂”は初めての経験だという。

 庄内協同ファームの中で、この被害を受けたのは私の地区だけ。台風のように広域にわたる被害ではないものの、ここから見て、北東地区ほど被害は大きかった。

 ともあれ、暑かった夏も気がつけばいつしかせみの声が止み、秋の虫の音が心地良く響く頃となった。8月も残りわずか、月が変われば枝豆の最終品種庄内5号の取り入れ、デントコーンでのサイロ作り、ヘチマ水の採水、そして稲刈りへと入っていく。季節の移り変わりをゆっくりと楽しむ余裕もなく、次々と続く作業を追いかける日々を、これも1つの幸せと呼ぶのだろうかと思いながらすごしている。



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